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執筆者の写真aimakita2014

ボルドー「シャトー」の謎】



「シャトー マルゴー」「シャトー ラトゥール」などフランス・ボルドー地方のほとんどの高級ワインには頭に「シャトー」という言葉が付きます。一般的にはシャトーとはフランス語で『お城』を意味し、ワイン用語としては「自らの所有地で栽培・醸造されたワイン」を示す言葉と理解されていますが「自らの所有地で栽培・醸造されたワイン」という事ならそのまま「所有地」を意味する「ドメーヌ」という言葉がありブルゴーニュでは「ドメーヌ ド ラ ロマネコンティ」など「ドメーヌ」が主流です。ではなぜボルドーでは「ドメーヌ」ではなく「シャトー」が使われているのでしょうか?


そんな長年抱えていたモヤモヤを解消するためにネットや文献の調査を開始しました。「シャトー」について調べ始めると、初めにシャトーの名称は「1800年代後半にボルドーで広まった」事が判明しました。


メドックの格付けは1855年なのでそれが正しければ「シャトー」の名称は1855年の格付け制定後に広まった事になります。今日私たちが目にするメドックの格付け表にはすべてのワインに「シャトー」の名称がついており何か不自然です。そこでグーグルの画像検索で1855年格付け制定時の手書きの証文を検索しその筆記体の文字をじっくりと読んでみました。


すると何と!格付け制定時の証文にシャトーの名が冠されているワインはラフィット・マルゴー・ラトゥール・ディッサン・ベイシェヴェルの5つしか無く他のワインは皆、単にオーブリオンやムートンとだけ書かれている事がわかりました。


さらに調べを進めると最初に「シャトー」を冠したのはシャトー マルゴーであり、シャトーの名がボルドーで広まったのは格付け制定から2年後の1857年にフランスで最初の商標法が採択された事がきっかけとなった事がわかりました。ワイン名の商標権を取得するには一般的な名称では無く、ワインの独自性を表現するための特徴的な言葉が必要とされたようです。


1800年代の後半は王侯貴族から市民階級に権力が移行した時期であり、当時の新興富裕層がブドウ畑の近くに壮麗な「お城」のような邸宅を建てそのワインに「シャトー」という名を冠することにより、『威厳のある美しいお城で造られた高級ワイン』というブランドイメージを創り出した…というのがボルドーワインになぜ「シャトー」が付けられたかの理由であることが今回の調査で見えてきました。


すでに名声の確立したブルゴーニュワインと違い17世紀にオランダ人の干拓技術により「新たに造られた」メドック地区のワインを売り出すためには「ドメーヌ」ではなく「シャトー」のような『キラキラ』した名称が必要だったのです。


今日の世界的なボルドーワインの名声の陰にこの巧みなブランド戦略があった事を思うとボルドーワインの味わいがまた一段と深くなります。

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